先生:この前のドタバタは何だったのじゃ。
なんかお客が怒鳴り込んで来たな。
わたし:ああ、あれですか。
どうもこの店で中古自転車を買っていった方が認知症だったらしくて、
ご家族の人がどなり込んできたんです。
「なんでこんな人に売りつけたんだ!」と言われても、
受け答えに特に変なところはなかったので、
気がつかなかったんです。
先生:まあ、そりゃ仕方がないな。
人間は大変だな。認知症の人がいると周りの人がいろいろ振り回されて。
わたし:鳥は認知症にならないのですか?
先生:まあ、動物だから年をとるとやっぱり頭がボケてくるわ。
野生の鳥はそうなる前に天敵にやられてしまうけど、
飼われている鳥の場合は認知症みたいな風になるんじゃないかな。
わたし:先生が認知症になるなんて想像できません。
先生:だれもなりたくてなる訳じゃなかろう。
なんでも認知症になった人が一番喜ぶのは笑顔だそうだ。
わたし:そんなこと、どこから知ったんです。
先生:お前がこの前ネットで調べていたじゃないか。
わたし:え~、ここからパソコンの画面が見えるんですか?
97歳の親父が私のことを誰だか分からなくなったので、
ちょっと調べてたんです。
先生:お前はワシが指を咬んだりするとすぐに怒るが、
そんな時も笑顔で接してくれ。
わたし:だって先生はまだ認知症じゃないじゃないですか。
先生:お前は誰じゃ?
わたし:・・・
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