わたし:先生を私の手のひらで包み込むようにすると、じっと動きませんが、
気持良いのですか?
先生:まあ、イヤではないな。
わたし:そんな言い方をして。本当はとても気持ち良いのではないですか?
先生:気持ち悪くはない。
わたし:まったく素直じゃないんだから。
たまに先生の身体のどこからかゴロゴロという振動が
私の手のひらに伝わってくるような気もするのですが。
先生:ワシは猫ではない。ゴロゴロはしない。
わたし:ねえ、どの辺を押したら気持ち良いんですか?
首のあたり? 胴体の真中あたり? しっぽの付け根あたり?
先生:鳥がマッサージされてうっとりしているなんて格好悪いし、
それにいつも恐怖と隣り合わせなんじゃ。
気持良くなっている余裕がない。
わたし:えっ! 恐怖とはなんですか?
先生:人間に握られているのだぞ。
ちょっと間違えれば、ワシなんぞ、あっという間につぶされてしまう。
わたし:あっ、そうなんですね。
そういえば、カミさんとケンカした後なんかは、思い出して
思わず手に力が入ってしまうことがありますね。
先生:どうか私のためにも、夫婦円満に過ごして欲しい。
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