パパチャリ市場

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9 カゴの鳥

わたし:先生、今日はどうしたんですか?
  元気が有り余っているようですね。

 

(先生は夜、店の床に置いたフタの付いた砂浴び場に置いた巣で眠る。

 夕方5時頃から翌朝9時頃まで店は真っ暗なので、毎日長〜い夜を過ごしている。

 

 朝、フタを開けると自分で砂浴び場から跳び出るが、この頃では年のせいか、

 一度で跳び出せないことが多い。

 ところが、今日はフタを少し開けたとたん隙間から跳び出して来た。)

先生:馬鹿言え。こんな狭いところに長い時間閉じ込められて、あ〜イヤだ、イヤ 
  だ。今日はなんか1分でも早く羽根を伸ばしたくて、たまらなかった。

わたし:でも、元気一杯のようで、飼い主としては嬉しい限りです。

 

先生:元気なんじゃない。ヤケなんだ。カゴの鳥はもう終わりにしたい。
わたし:でも、三食昼寝付きのところはあまりないですよ。

先生:まあ、それはありがたいが、行きたいところに行けないのはつらい。

               

わたし:どこに行きたいんですか?
先生:外の自然の中を自由に走り回ってみたい。

わたし:でもこの辺は自然が少ないですよ。それに外には猫やカラスなんかの
  外敵もいるし、車もバンバンと走ってますよ。

           

先生:ずいぶん脅かすね。でも自由に生きているお前がうらやましいんだ。

わたし:そう見えるかも知れませんが、
  どうも最近わたしは「お釈迦様の上の孫悟空」
  じゃないかと思い始めているんです。
  

                       

先生:何だそりゃ。
わたし:詳しい話は省きますが、じたばたしても結局お釈迦様の手のひらから
  出られないということなんです。
  
  カゴは見えるから出れば分かるんですけど、これは目に見えないから
  出たかどうかも分からないんです。

 

先生:それは困ったもんだな。
  それでお釈迦様というのは天の上にいるのか?

わたし:それがどうももっと近くにいるような気がしてならないんです。

 

先生:近くにだと?

わたし:もしかしたらと思うんですが、とても口に出しては言えません。

 

 

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